「なんとなく企画クリエイティブの仕事をしたいと思っている人のなんとなくをなんとなくじゃなくする本 」略してなんクリ、いつもお世話になっている、そして尊敬する福田敏也さんの初めての単著です。
「企画を考える」とは、どういうことなのか。継続的に企画を生み続ける脳みそを育成するためには、まるで筋肉のように、脳みそを鍛えることが重要だと福田氏は説きます。そして30年のプランニング人生と10年の大学講師人生で組み立ててきた「脳みそを鍛えるための」具体的メソッドを解説していきます。企画を生み出す発想法や情報の収納法、戦略シートの書き方など、プロの人たちは、どんな考え方で、日々の発想に臨んでいるのか。できるかぎりたくさんの視点と考え方を開示することで、企画を仕事とするために必要となる、脳みその使い方をわかりやすく説いていきます。
また、同時に、そのメソッドは、広報、プロモーション、商品企画、事業企画、サービス企画などの現場でどのように活用可能なのかも、それぞれのメソッドに紐づけて解説していきます。」
amazonの紹介より抜粋。
と紹介されていますが、この本、クリエイティブ職に就く人で無くても一読の価値あり、仕事の本質的なヒントが満載の素敵な本です。
例えば"こんな企画がソーシャルメディアではウケる!"とか、3年後には役に立たなそうな、そういう付け焼き刃を身に付ける本ではない。
これからの時代における企画の本質を、敏也さんの言葉で丁寧に綴られた良書でした。いいことばっか書いてありました。
対象は「なんとなく企画クリエイティブの仕事をしたいと思っている人」だけど、ビジネスパーソンなら誰が読んでも何かの気づきが得られるはず。
販売施策を考えたい店長、WEBをデザインする人、マーケティング、広報の人、etc、何かを伝えるための本質的な部分、つまり、何を伝えるのか、どう伝えるのか、じゃあ伝えるための手段はどれ、伝える能力を考えつくまでの脳みその鍛え方や、アイデア発想法などが網羅されています。
文章もまるで敏也さんがそのまま語りかけているよう。平易で読みやすいけど、慎重に選ばれた言葉で綴られていて、すっと文章が頭に入ってくるから一瞬で読めちゃいます。
本の中身を抜粋しながら"何となく"備忘録。
「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」
(「アイデアの作り方」という本の引用)
「まったく誰も見たことのないスゴイ企画をやりたい」という人はいるけれど、まったく見たこともないものに人は感動できまない。だって、今まで見たこともないものを見ても、人はどう判断して良いかわからないから。
だから企画のプロは、高い確率でターゲットの気持ちを大きく動かすスゴイ組み合わせを考えつかなければならない。だからこそ重要なのは、今の時代に、どんな視点と考え方で考えるかということなんですね。
要は既存の要素の組み合わせ。
人間の認知は、何か見慣れない対象物を見たときに、それが既知の何にあたるのかという参照先を探しにいく。多分それは、人間が生き物として生きてきた歴史の中で培われた、対象物が自分にとって安全なものなのか安心できるものなのかをまず判断する本能によるもの。
既知のものと対して変わらないものであれば、「僕の知ってるアレね」で終わるけど、既知のものから自分の想像を超えたジャンプをしたものであれば、想像力のスイッチがオンになり、「新しい!」「すごーい!」かっこいいとなる。
そうそう、アイデアというものはいきなり何も無いところから降って湧いてくるのではなく、今までの自分のインプットから引張り出してくるもの。だからこそ、仕事を通して様々な気付きや経験を得るのも、テレビも見て何が流行っているか知るのも、Facebookでシェアされるネタのリンクをクリックしちゃうのも、美術館に行って最先端のアートに触れるのも、本を読むのも、美味しいご飯を食べるのも、全部自分のインプット&糧になるのだと。
このインプットが減れば減るほど、自分の脳みそは許容範囲が狭くなってどんどん固定概念化していってしまうよね。
最近忙しい忙しい言って、あまりインプットできてないので、気をつけよう!
「何をいうのか?」「どういうのか?」良い企画はこれが緻密に設計されている
例えば"instagramが流行っているからinstagramを使った企画をやりたい!"とか手段が先にきちゃう企画ってありがち...
でも、「何をいうのか?」「どういうのか?」それが基本なのでアル!(言われてみれば当たり前なんだけどね)
例えば、自社の広報やマーケティングを長くやっていると、「何をいうのか?」「どういうのか?」の本質的な部分をだんだん考えずに惰性になってしまっている時がある(自省)。
「何をいうのか?」の基本は、商品・サービスやブランドのコアな価値。それがシンプルにして強ければ強いほど、伝わるは深くなる。あれもこれも言いたいと欲張ってしまうとだんだん意味が無くなる。
「どういうのか?」は、どう言うと強く、深く、効果的にターゲットの心に刺さるのか。広告であれ、サービスであれ、企業活動であれ、向き合うべきはターゲットの気持ち。
そして、情報価値を考える
今の時代は、
- 高度成長のように、消費に夢見る時代ではなくなった
- 市場は成熟し、商品の情報性は全般的に低くなった
- 生活者は多種多様な情報回路を手に入れた
- その商品に情報価値はあるのか
- その商品スペックに情報価値はあるのか
- その企業情報に情報価値はあるのか
- その映像に情報価値はあるのか
- その体験に情報価値はあるのか
俯瞰力とディテール力
企画全体を俯瞰する力と、そしてディテールまで考える力、大事。
その企画を考えついた人にしか、実現すべきディテールのレベルはわからない、その深さもわからない。
それを誰かに丸投げしてしまったら、実現したいものの本質が伝わらないまま似て非なるアウトプットにしか着地しない。
しつこいまでの俯瞰とディテールの行ったり来たりが重要になる。
ビジョンある企画書づくりにエネルギーを注ぎながら、現場という泥沼に積極的に足を突っ込んでいく姿勢。そこでのリアルなトライ&エラーに関わる姿勢。時間もとられるし手間もかかるけど、本当に時代が振り向く大きな仕事をしていくためには、誰かが必ずこの仕事を引き受けなくてはならない、と語られています。
ああ、身にしみる。
仕事をしていく上で、ちょっとスランプになる時もあると思う。
そんな時にこの本を読み返すと基本と本質に立ち戻れそうです。
決して売ったり捨てたりしない、ずっと大事にとっておきたい本になりそうです。
講談社
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